ミュージカル情報
『Tell Me on a Sunday ~サヨナラは日曜日に~』+アフタートークショー
2016年6月23日14:00開演 @新国立劇場小ホール
スタッフ・キャスト
【音楽】アンドリュー・ロイド =ウェバー
【歌詞】ドン・ブラック
【演出・翻訳・訳詞】市川洋二郎
【出演者】
エマ:濱田めぐみ
声の出演:浦井健治
感想
☆ネタバレあります。
濱田めぐみさんの20周年記念ソロミュージカルを観てきました。
新国立劇場小ホールは小さい箱なので、舞台と観客席がひとつになったような不思議な空間でした。
ソロミュージカルということは出演者一人なのでそれ自体珍しいのですが、とにかく演出も初めて見るようなものばかり。
開演時間になり会場が暗くなると観客席(ステージシート)にスポットライトが当たり、そして一人の女性が立ちました。濱田さんの登場です。
実は、登場(というか着席?)のシーンを見逃しました。なんでお客さんにライト当たってるの?と思ったら、濱田さんだったのでビックリ。
最初から不思議な感覚に陥ったのは、普通のミュージカルはオーヴァチュアが流れて幕が開き役者が登場って感じだと思うのですが、このミュージカルは幕がなく無音のまま濱田さんが客席から登壇し、劇が始まる…といった流れのせいでしょうか。
そして、濱田さんがスーツケースを開けると生バンドの演奏が始まりました。
最初の登場は白いノースリーブに白い短パン。
それは純粋な素のエマを表現しているのでしょうね。
その上からいろんな衣装に舞台上で生着替えします。
檀上も真っ白で、あるのは6つのスーツケースのみ。
真っ白な舞台にプロジェクターで映像が映し出されたりライティングや効果音によって、5W1Hがよくわかります。
飛行機に乗っている、電車に揺られてる、ビーチで水に触れている、玄関が開いて誰か来た、…など想像力を掻き立てられる演出でした。
とにかく光と影の効果が良かった。
窓から漏れる月明かりに照らされているベッドのシーンは特に綺麗でした。
また、他の登場人物もエマの視線や相手を触る仕草でちゃんとそこに人がいるように感じられます。
エマがベッドに寝てる彼を優しく見つめたり、彼の寝顔を描くシーンなんて穏やかな愛に溢れていてキュンキュンしました。
特にスケッチブックに描いてるとき、後ろのプロジェクターに彼の寝顔の絵が完成していく様子が映し出されるところが好きなシーンです。
場面ごとにスーツケースを移動させて、それを組み合わせてベンチにしたりベッドを作ったり、これをすべて濱田さんが一人でやっていました。
裏方さんが出てくることもないから、小道具は天井から紐に吊るされて降りてきたり。
その6つのスーツケースの中にもそれぞれに衣装や小道具が入っているんですけど、どこ何が入ってるか、どこに何を置くか、すべて覚えているのがスゴイ。
曲を覚えるだけでも大変なのに。濱田さんの言う「脳みそパンパン」も納得です。
濱田さんの演技も歌もいつもながら素晴らしくって、この70分が幸せでした。
エマという喜怒哀楽の表現が豊かな女性を可愛らしく演じておりました。
なんだか一人の女性の人間らしい普通の生活を見てる感覚。
歌も聞かせるんじゃなくて口ずさむように歌ったり、独り言をボソっとつぶやいたり、ため息なんかもしっかり聞こえます。
涙すごいなぁ。泣きながらも声を震わさずに歌うって普通はできない。
あの曲たちは、濱田さんだからこそ歌える難しい歌だな…
ロイド=ウェバーらしい変拍子・転調・音域の広さ。1回聴いただけじゃ歌えません。
音楽は生バンドの演奏です。舞台袖で江草啓太さんがキーボードを弾きながら濱田さんの動きに合わせて指揮しているのが見えました。
ストーリーは70分の中でちゃんと四季があって、四季の移ろいと共に4つの恋を表現しているのが素敵。
1人目(春)はミュージシャンのジョー。
2人目(夏)は映画プロデューサーのシェルダン。
3人目(秋)は年下カメラマンのサイモン。
4人目(冬)は妻子持ちサラリーマンのポール。
ジョーと別れるときは、怒りにまかせて自ら出て行ったって感じだったけど、いろんな経験をするにつれ別れ方も大人になっていきました。
サイモンが一番好きだったんだろうなぁ。でも彼とのお別れは冷静。
その別れの曲がこのミュージカルのタイトルにもなっている「Tell Me on a Sunday」という歌です。
別れを言うその時は、お願いだから公園で過ごしましょう
美しい思い出を残したいから最後には微笑んでささやいてね
サヨナラは穏やかな日曜の午後に…
この歌で大人の女性になっていくエマの成長が感じられました。
残念なのは、デザイナーの夢には全く触れられていないところ。
夢を追ってニューヨークに来たのに、追っているのは男性遍歴ばかり。
エマのような恋愛依存症で、恋は盲目的な女の子が夢を叶えるのは難しそうだけど。
夢より恋愛に一生懸命な女の子。失敗してへこたれても、また立ち上がっていくエマの強さは応援したくなる感じでした。
フラれても過去は振り返らないところに好感持てました。
そして、アフタートークショー。この日のテーマは…
『TMoaS』の視覚世界~ビジュアルデザインについて~
ということで、舞台デザインの伊藤雅子さんを交えて演出家市川さんと3人のトークショーでした。
このミュージカルはまず舞台の形が変わっていてそこに興味を持ったので、このテーマが聞けてよかったです。
印象に残っていることをダラダラ書きます。
観客席と舞台の見えない境界を第4の壁っていうらしいんですけど、それを取り除きたかったそうで、舞台のへりが丸くなっていました。
さらにキャンバス生地を貼っていて、舞台そのものがスケッチブックをイメージされているんだとか。
だからプロジェクターの映像も手書き風の絵になっているんですね。なるほど。
真っ白な舞台というのは照明さんに嫌がられるそうですが、白に強いこだわりがあったそうです。
バミリ(役者の立ち位置や道具の置き場所の目印)も普通はいろいろな色を使いますが、これも白一色だそうです。
客席からは全然見えなかったです。
あと新国立劇場の小ホールはステージと座席を自由に組み合わせられるから、舞台を真ん中にして360°を客席が取り囲む形も考えたそうですが、それだと他の劇場でやるのが難しくなると言われ却下されたんだとか。
…ということは?他の劇場での再演もあり?
市川さんが好きな演出は、2つ目の恋が終わったときのビバリーヒルズからニューヨークに戻るシーン。
床に地図が映し出されて実際に地図の上をニューヨークまで濱田さんが歩くところだそうです。
私も見てて、そういう演出をしているのがわかり、あっ、おもしろい!って思っていました。
とにかくシンプルで客席と舞台が近いから、細かいところに目を向けやすく繊細な演出や演技を楽しめました。
1回観ただけじゃ気付いてないこともたくさんありそう。

追記
舞台映像がYouTubeにアップされました。


